相続した不動産を売却する際、名義人が複数いる「共有名義」の状態では、共有者全員の同意がなければ売却できないのが最大のポイントです。 | センチュリー21安藤建設

相続した不動産を売却する際、名義人が複数いる「共有名義」の状態では、共有者全員の同意がなければ売却できないのが最大のポイントです。このため、話し合いがまとまらない、連絡が取れない共有者がいる、持分の扱いをどうするかで意見が割れるといったトラブルが起きやすく、売却自体が頓挫するリスクがあります。一方で、早めに遺産分割を済ませて単独名義にする、あるいは共有者間で売却方針を事前にすり合わせておくことで、スムーズな売却につなげることも十分可能です。
この記事では、相続不動産を共有名義のまま売却するケースと、一度単独名義にしてから売却するケースのそれぞれについて、手続きの流れや税金、よくあるトラブルとその対策を解説します。読み終える頃には、ご自身の状況で「次に何をすべきか」が明確になり、不動産会社や税理士との相談もスムーズに進められるはずです。
相続で名義人が複数になる理由と、そのまま売却するメリット・デメリット
相続が発生すると、被相続人(亡くなられた方)の名義だった不動産は、原則として相続人全員の共有財産となります。例えば、配偶者と子 2 人が相続人の場合、法定相続分に従って「配偶者 2 分の 1、子それぞれ 4 分の 1」といった持分が決まり、登記も共有名義になります。この状態を「相続による共有名義」と呼びます。
共有名義のまま不動産を売却することも法律上は可能ですが、実際には次のような特徴を理解しておく必要があります。
共有名義のまま売却するメリット
- 遺産分割協議を待たずに、早期に現金化できる可能性がある(共有者全員が売却に合意している場合)。
- 相続登記を一度で済ませ、その後すぐに売却手続きに移れるため、手続き回数を減らせるケースがある。
- 共有者それぞれが、自分の持分に対応する「居住用財産の 3,000 万円特別控除」などを個別に使える可能性がある(要件を満たす場合)。
共有名義のまま売却するデメリット
- 共有者全員の同意が必須であり、1 人でも反対や連絡不通がいると不動産全体の売却は事実上不可能になる。
- 売却価格や売却時期、仲介会社などで意見が割れやすく、話し合いに時間がかかる。
- 共有者が増えるほど調整が複雑になり、将来的に「誰と共有しているか」が把握しづらくなるリスクがある。
特に注意したいのは、「持分が小さいから自分の意見は通らないだろう」と考える共有者がいても、法律上は持分の大小に関わらず全員の同意が必要という点です。例えば、兄弟 3 人で相続し、1 人だけ「売却に反対」または「価格に納得できない」という状況になれば、不動産全体の売却話はそこで止まってしまいます。
相続不動産を売却する 2 つのパターンと手続きの流れ
相続不動産の売却は、大きく分けて次の 2 つのパターンがあります。
- 共有名義のまま、共有者全員で売主として売却するパターン
- 遺産分割協議で単独名義にしてから、その名義人が売却するパターン
それぞれの手続きの流れを、時系列で整理します。
パターン 1:共有名義のまま全員で売却する場合の流れ
- 相続人の確定と遺言書の確認 まず、誰が相続人になるかを戸籍謄本などで確定し、遺言書があればその内容を確認します。遺言で「不動産は A に相続させる」と指定されていれば、原則としてその内容に従います。
- 遺産分割協議(売却方針の合意形成) 不動産を共有名義のまま売却する場合は、遺産分割協議の中で「売却すること」「売却価格の目安」「売却後の代金分割方法」などについて、共有者全員の合意を取ります。この段階で意見が割れると、以降の手続きが進まなくなります。
- 相続登記(共有名義での名義変更) 法務局に対し、被相続人名義から相続人全員の共有名義へ変更する「相続登記」を申請します。売却を前提とする場合でも、原則としてこの登記を先に済ませておくのが一般的です。
- 不動産の査定と売却活動 複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格の目安を把握します。共有者間で「どの会社に仲介を依頼するか」「最低売却価格をどこに設定するか」を合意した上で、売却活動を開始します。
- 売買契約と引き渡し 買主が見つかり、価格や条件で合意できれば売買契約を締結します。契約書には共有者全員が「売主」として署名・実印を押印し、印鑑証明書を添付します。その後、代金受領と引き渡しを行い、手続きは完了です。
- 確定申告(譲渡所得がある場合) 売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合、共有者それぞれが自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、個別に確定申告を行います。代表者がまとめて申告することはできません。
パターン 2:一度単独名義にしてから売却する場合の流れ
- 相続人の確定と遺言書の確認 パターン 1 と同様、相続人の範囲と遺言の有無・内容を確認します。
- 遺産分割協議(不動産を誰が承継するか決定) 「不動産は長男が単独で相続し、その代わり他の相続人には現金で清算する」「配偶者が自宅を承継し、預貯金などで調整する」など、不動産を誰が単独で取得するかを協議で決定します。この合意内容を「遺産分割協議書」に明記し、全相続人が署名・実印を押印します。
- 相続登記(単独名義への変更) 遺産分割協議書に基づき、被相続人名義から「特定の相続人 1 名」へ名義を変更する相続登記を申請します。これで、その相続人が単独名義人となります。
- 単独名義人による売却活動 単独名義になった相続人が、自身の判断で不動産会社を選定し、査定・売却活動を進めます。他の相続人の同意は不要ですが、遺産分割協議で「売却して現金を分配する」ことを前提にしていた場合は、その方針に沿って進めることになります。
- 売買契約・引き渡し・確定申告 単独名義人が売主として売買契約を締結し、代金受領・引き渡しを行います。譲渡所得が生じた場合は、その名義人が単独で確定申告を行います。
「どちらのパターンが良いか」は、共有者間の関係性や、相続税の資金調達方法、今後の資産設計などによって変わります。例えば、「兄弟間で信頼関係があり、売却方針もすぐに合意できそう」であれば共有名義のまま売却しても問題ない一方、「意見が対立しそうな要素がある」「連絡が取れない相続人がいる」場合は、早めに単独名義化の方針を固める方が現実的でしょう。
共有名義の相続不動産を売却する際の税金と特例
相続不動産を売却する際の税金は、基本的には単独名義の場合と変わりません。中心となるのは、売却益にかかる譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)です。共有名義だからといって特別な税金が追加されるわけではありませんが、計算の仕方や特例の適用方法にいくつか注意点があります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、おおまかに次の式で計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
ここで、「取得費」とは、被相続人がその不動産を取得した際の購入代金や改良費などを指し、相続によって取得した場合は被相続人の取得費を引き継ぎます。「譲渡費用」には、仲介手数料、測量費、印紙税、解体費(空き家特例を使う場合など)が含まれます。
共有名義で売却する場合は、売却価格も取得費も譲渡費用も、持分割合に応じて按分します。例えば、持分 2 分の 1 の共有者であれば、売却価格の 2 分の 1 を基準に譲渡所得を計算します。
税率について
譲渡所得の税率は、売却した年の 1 月 1 日時点で、その不動産を所有していた期間が 5 年を超えるかどうかで変わります。
- 所有期間が 5 年超:長期譲渡所得(税率は約 20.315%)
- 所有期間が 5 年以下:短期譲渡所得(税率は約 39.63%)
相続不動産の場合、所有期間は被相続人の取得時期から通算するため、被相続人が長く所有していた物件であれば、長期譲渡所得として低い税率が適用されることが多くなります。
居住用財産の 3,000 万円特別控除
自分が住んでいた住宅(居住用財産)を売却する場合には、「譲渡所得から最大 3,000 万円を控除できる特例」があります。共有名義の住宅であっても、要件を満たす共有者それぞれが最大 3,000 万円まで控除を受けられるのがポイントです。
例えば、夫婦で共有していた自宅を売却する場合、夫婦それぞれが居住要件を満たせば、理論上は合計 6,000 万円まで控除できる可能性があります。ただし、実際にその住宅に住んでいた、あるいは転居後 3 年以内に売却しているなどの条件を満たす必要があります。
相続した空き家の 3,000 万円特別控除
被相続人が住んでいた家を相続し、その後一定の条件を満たして売却する場合、「相続した空き家の 3,000 万円特別控除」が使えることがあります。この特例は、不動産全体を売却することが前提となっているため、共有持分だけを単独で売却するケースでは原則として適用できません。
共有名義のまま不動産全体を売却し、かつ「被相続人が住んでいた家である」「相続後 3 年以内に売却する」「一定の耐震基準を満たすか、除却して土地を売却する」などの要件を満たせば、共有者それぞれが持分に応じた控除を受けられる可能性があります。ただし、適用には複雑な条件があるため、事前に税理士や所轄の税務署に確認することをお勧めします。
確定申告の注意点
共有名義で不動産を売却した場合、共有者それぞれが個別に確定申告を行う必要があります。売買契約書が 1 通であっても、税務上は共有者ごとの取引として扱われ、各自が自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、申告・納税を行います。
また、3,000 万円特別控除などの特例を利用する場合、譲渡所得が 0 円になるケースでも、特例を適用するためには確定申告が必須です。「税金がかからないから申告不要」と判断せず、必ず申告手続きを行うようにしてください。
共有名義の相続不動産で起きやすいトラブルと対策
実際に相続不動産の売却に関わっていると、共有名義が原因で次のようなトラブルが頻繁に起こります。あらかじめ想定し、対策を打っておくことで、大きな混乱を防ぐことができます。
1. 共有者の一人が売却に反対する
「自宅は売却したくない」「もっと高く売れるはずだ」「兄弟の一人にだけ有利な条件になるのは納得できない」など、売却そのものや売却条件に反対する共有者が現れるケースです。この場合、法律上は共有者全員の同意がなければ不動産全体の売却はできないため、話し合いがまとまらない限り売却は進みません。
対策としては、次のような方法が考えられます。
- 遺産分割協議の段階で「売却する前提」を明文化し、全員の合意を得ておく。
- 売却価格の下限や、複数の査定結果を共有した上で、客観的な市場価格を基準に話し合う。
- 反対する共有者の懸念点(居住の確保、資金計画など)を丁寧に聞き、代替案(賃貸活用、一部持分の買取など)を検討する。
それでも合意が得られない場合は、裁判所による「共有物分割請求」の手続きを利用し、強制的に共有関係を解消する方法もありますが、時間と費用がかかるため、最後の手段と考えるのが現実的です。
2. 連絡が取れない共有者がいる
長年連絡を取っていない兄弟や、海外在住の相続人など、「どこにいるか分からない」「連絡がつかない」共有者がいる場合、売却の同意を得ること自体が困難になります。この状態では、不動産全体の売却は事実上不可能です。
対策としては、次のようなアプローチがあります。
- 戸籍や住民票、知人・親戚経由で連絡先を突き止める努力を記録として残す。
- 内容証明郵便などで売却方針を通知し、一定期間回答がない場合は「黙示の同意」を主張する余地があるか、弁護士に相談する。
- やむを得ない場合は、共有物分割請求を通じて、裁判所による競売や代金分割による共有関係の解消を目指す。
特に、相続発生から年数が経過しているケースでは、連絡先不明の共有者が増えがちです。早めに相続手続きを完了させ、必要に応じて専門家のサポートを受けることが重要です。
3. 売却後の代金分配で揉める
「売却代金をどう配分するか」で、共有者間でトラブルになることもあります。持分割合通りに分配するのが原則ですが、「介護をしていたから多くもらうべきだ」「過去の仕送りを考慮してほしい」など、感情的な要素が絡むと話がこじれやすくなります。
こうしたトラブルを防ぐためには、売却前に「代金分配方法」を遺産分割協議書や書面で明確に決めておくのが最も効果的です。具体的な分配割合、振込先口座、分配時期などを記載し、全員の署名・実印を得ておけば、後日の争いを大幅に減らせます。
4. 共有持分だけを勝手に売却される
法律上、共有者は自分の持分だけを第三者に売却することが可能です。この結果、「知らない人と共有関係になる」事態が起きることがあります。例えば、兄弟の一人が自分の持分を業者や投資家に売却し、見知らぬ第三者が共有者として加わるケースです。
これを防ぐためには、共有者間で「持分を第三者に売却しない」「売却する場合はまず他の共有者に優先的に売却する」といった内容の合意書を作成しておく方法があります。完全に防止できるわけではありませんが、一定の抑止効果は期待できます。
相続不動産の売却をスムーズに進めるための実践的なアドバイス
ここまでの内容を踏まえ、実際に相続不動産の売却を検討されている方向けに、具体的なアドバイスをいくつかご紹介します。
1. 相続発生後は「早めに方針を固める」
相続が発生したら、感情的な整理がつき次第、早めに「不動産をどうするか」の方針を共有者間で話し合うことをお勧めします。「売却する」「誰かが相続して住み続ける」「賃貸に出す」など、方向性が決まっていれば、以降の手続きがスムーズになります。逆に、方針が決まらないまま時間が経過すると、固定資産税の負担が継続したり、物件が老朽化して売却価格が下がったりするリスクがあります。
2. 複数の不動産会社に査定を依頼する
売却価格の目安を把握するためには、複数の不動産会社に査定を依頼するのが基本です。特に共有名義の場合は、「この価格なら全員が納得できる」というラインを見極めることが重要になります。1 社だけの査定だと相場感が偏る可能性があるため、少なくとも 3 社程度から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
3. 書面での合意を徹底する
「口約束」や「なんとなくの合意」は、後日のトラブルの元になります。売却方針、価格の下限、代金分配方法、仲介会社の選定など、重要なポイントは必ず書面(遺産分割協議書、覚書、メールの記録など)に残してください。特に、高齢の共有者がいる場合は、内容が正確に理解されているかを確認し、必要に応じて家族同席で説明するなどの配慮も有効です。
4. 税金面は専門家と相談する
譲渡所得税や特例の適用は、ケースによって複雑になります。特に、居住用財産の 3,000 万円控除、相続空き家の 3,000 万円控除、取得費加算の特例などを組み合わせる場合は、税理士や所轄の税務署に事前に相談し、適用要件を満たしているかを確認してください。後から「特例が使えなかった」となると、税負担が想定より大きくなる可能性があります。
センチュリー 21 安藤建設へのご依頼について
相続不動産の売却は、法律・税金・手続きのすべてにおいて専門的な知識が必要となり、共有名義が絡むとさらに複雑になります。センチュリー 21 安藤建設では、相続による共有名義不動産の売却について、以下のようなサポートを提供しています。
- 共有者全員を対象とした、分かりやすい売却方針の説明と調整サポート
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- 税金面での注意点や、特例適用の可否についての専門業者(税理士等)との連携サポート
- 売却後の代金分配方法など、共有者間で揉めにくい仕組みづくりのアドバイス
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※本コラムの内容は 2026 年 10 月 9 日時点の情報に基づいております。法改正や制度変更により、一部内容が異なる場合がございます。実際の売却にあたっては、最新の法令や個別の事情を踏まえてご判断ください。内容に相違がある場合は、お手数ですがセンチュリー 21 安藤建設までご連絡いただけますと幸いです。
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